「ははっ。姉ちゃんも楓いじめるの好きだなぁ」

無駄な爽やかさを振りまきながら、リビングへと入ってきた兄さんを軽く睨んでも、結局は姉さんと似ている兄さんは全く気にとめてない風だった。なんだこのドS達は。

「あんたいじめてもつまんないのよ。全く、いつからそんなに可愛げが無くなったのかしら」

「25にもなって可愛げがあったら怖いよ」

大好きで憧れて背中ばかりを追いかけていた2人も、いつの間にか大人になってしまって。今俺の目の前には、少なくとも点数化される目標というものは無くて。セーラー服を着た姉さんや学ランを着た兄さんは、もう色褪せてしまった。

妙な哀愁に小さく溜息をついて、俺はポットから紅茶を注いだ。好きなメーカーの茶葉が切れて、仕方なしに買った安っぽいインスタントのダージリンは、やっぱり安っぽい味がした。

いつから、こんなに紅茶の味が分かるようになったんだろう。缶のミルクティーでも満足していた自分が、あまりにも遠い過去にいる。

珍しく休みの重なった俺達兄弟は、ずっと前からしているように、リビングでのんびりと休日を過ごしていた。みんな学生だった頃、俺が小学生だった頃は、毎週末が楽しみで楽しみでたまらなかったのに。突然に訪れた懐かしい時間に、何故だか俺は戸惑っている。