そして一番腹が立つのは、私がなにをやっても神崎には勝てないということだ…。
神崎という男は、なぜか勉強も出来て、スポーツも出来る。
なんでも器用に平然とこなしてしまうのだ。
…そして、そんな神崎の言うことに私はいつも逆らえないでいる。
「…オイ、放課後俺に付き合え」
無口な神崎は、いつも突然口を開く。
「はぁ?嫌よ。帰ってドラマの再放送観るんだから」
友達と一緒に帰ると言えないのが、少し淋しい…。
「…家に引きこもってないで、たまには外で遊べばどうだ…」
「私のお母さんか、アンタは…。てか、遊びに行くの?」
「映画観に行く」
「えっ!?まさかのデートのお誘い!?」
「阿呆が。今日が何日か言ってみろ」
「何日…? …えっと、21日?」
「22だ。馬鹿。
つまり夫婦の日だ。この日はカップル割りで、安く映画が観れる」
「………」
神崎になにか期待した私が馬鹿だった。
「……学割使えば?」
「学生証持ってたら、こんなことお前に言うか」
「……」
つまり、学生証忘れたってことね…。
真顔で失礼なことを言う神崎に、私は小さくため息を零した
「…あんた、その言い方で頼んでるつもりなの?」
「相手がお前じゃなかったら、こんな言い方もしない」
「むかつく!!」
…神崎はこんな奴なのだ。