「片桐、ちょっとごめんな。」


ずっとひとりでしゃべり続ける奈摘の口を圭斗の一言が止めた。


「話しあんだけど、ちょっと来てよ。」


そう言われたのは、あたしだった。



そんな光景をみて、奈摘がいい気持ちがするわけもなく、奈摘の冷たい視線を感じる。



「あたし…話なんてない…。」



あたしは、これ以上近付かないように遠ざけようとする。



「お前がなくても俺があんの。」



それでも圭斗は、遠ざければ遠ざけるほど追いかけてきた。



「ないってばっ！！」


あたしはそう叫んで教室を飛び出した。



あたしの大きな声が、騒がしかった教室を静かにさせた。



飛び出したまま、トイレに駆け込む。



駆け込んだ瞬間。
…泣いていた。



なぜかな？
…苦しかった。悲しかった。

胸が張り裂けそうになるくらいツラかった。



ブレザーのポケットに入ってた今朝圭斗にもらったアメをあたしは握り締めた。

圭斗、ごめんね。




でも…


これでよかったんだよね。