過去のことは、どうこう言いたくない。
祥子が今、俺だけを見てくれたなら。
そんなことは言わなかった。
俺を見てほしかった。
そして、祥子はここを辞めた。
祥子が辞めてからは、
二人のそんな姿を見ることもなくなり、
俺の心も落ち着いていった。
不倫相手もいつの間にか
会社からいなくなっていた。
やっと普通に付き合っていける。
そう思っていたが、いろんなことがあって
俺の中で祥子に疑問を持ち始めた。
ホントに祥子で大丈夫なのか?
やっていけるのか?
そう思い出したんだ。
相変わらず祥子は
恋人らしいことはしない。
スキンシップをはかろうとしても
キモイ、ウザイの連発で殴る蹴るだ。
「祥子、ホンマ俺のこと好きなんか?」
「好きやから何年も一緒におるんやん。」
なんか言い方にひっかかる・・・
この先、俺たちどうなるんだ・・・?
「今日も仕事かぁ~・・・
さすがに夜との兼用はしんどい・・・」
今日も満員電車に揺られて
会社へ向かう。
そう言えば今日は外回りだったなぁ、
確か、高橋とだったような・・・
高橋麻衣 21歳
男子社員の中でもかなり人気のある、
かわいい系で、やけに色気のある子だ。
「有方先輩。おはようございます。
今日はよろしくお願いします。」
俺が会社に着くなり、
高橋が挨拶に来た。
「おう、おはよう。よろしくな。」
俺はそう言って、高橋の髪を
ぐっしゃっとした。
「もぉ~、先輩~」
「はははっ」
高橋はおちょくりがいがある。
俺にとってはかわいい後輩だ!!
そう、高橋は妹のよう・・・
だと思ってたのに・・・
会社の車に乗り込み、
高橋と外回りに出かけた。
♪♪♪♪♪~
高橋が鼻歌を歌いだした。
その横顔が妙にかわいく見えた。
「高橋、何の曲だ?」
「知らないんですか?
藤森鉄成ですよ。
すごくいいんですよ。」
「そうなんだぁ~。
俺はそーゆうのうといからな。」
んっ・・・!?
こいつスカート短くないか?
ここの会社はわりとスカートの
丈は短めなのに、
今日は一段と短め・・・
横で座る高橋の生足に
ドキドキしてしまった。
何考えてんだ俺は?
妹みたいだと思ってたのに・・・
あれ・・・おかしいなぁ・・・
チラッ。
ダメだ、目がいってしまう!!
「先輩、さっきからどこ見てるんですか?」
ドキッ!!
「えっ!? い、いやぁ~
いい天気だなぁ~と思って。」
「ふ~ん、そうですかぁ~?」
「なっ、なんだ?
その疑いの目は・・・?」
「先輩、私の足見てたでしょ?」
「はっ、はいぃぃぃー???」
ば、ばれてた?(汗)
「み、見てないわ!!」
俺は完全にテンパッている。
「先輩かわいいっ!!」
くっ!!
完全に高橋におちょくられてる・・・
車は信号待ちで止まった。
「ねぇ先輩。
今度ご飯行きませんか?」
高橋が俺の太ももに手を置き
上目遣いで俺を見た。
なっ・・・!!
そんな目で俺を見る?
しかも太ももに手を置かれると、
なんだか変な気持ちになる。