「ごめんなさい・・・
また怒られちゃう・・・」
「高橋・・・」
「こんなことでしか先輩に
触れられないから・・・
もうしません!!
だから、嫌わないでください。」
「嫌いになったりはしない。」
「よかった・・・」
高橋はホッとした表情を見せた。
「けど、俺が高橋を
好きになることはない。」
「えっ・・・」
「俺はおまえを妹のように思ってきた。
今更、恋愛対象には考えられない。」
「先輩・・・」
高橋の目から涙がこぼれ落ちてきた。
「ホントごめんな。」
「・・・絶対に・・・ないですか?」
「ああ、絶対にない。」
「ううっ・・・」
高橋は両手で顔を押さえて泣いた。
俺は嘘をついた。
俺は高橋をいつの間にか
女として見ていた。
こんなに俺のことを
一途に想ってくれて
明るく接してくれる。
こいつといれば毎日が
幸せだろうって・・・
けどこれは俺なりのケジメなんだ。
こっちがダメだからあっち。
そんな風に高橋を選べなかった。
俺の中でそれだけ大切に
しないといけない存在なんだ。
俺は今でも果穂ちゃんが好きだ。
ピエロだったとしても好きなんだ。
こんな気持ちで高橋にいけない・・・
それから高橋は俺のいる部署を離れた。
これが原因なんかじゃない、
ただ会社で人手の足りないところへ
応援に行ったんだ。
ちょうどよかったのかもしれない。
俺は本当に一人になった・・・
それから三ヶ月が過ぎ、
会社でもほとんど高橋と
会うこともなかった。
「あぁ~今日も休みは一人かぁ・・・」
休日をいつものように一人で過ごす。
最近の休日は特に何をすることもなく
ただ家でボーっとしている。
彼女がいた頃が懐かしい・・・
しかし、一人もそんなに悪くない。
一人でドライブに出かけたり、
カフェでまったりした時間を過ごしたり。
結構楽しんでいる。
このまま独身も悪くないかなぁ~・・・
って、こんなんで大丈夫か、俺・・・
理想の結婚なんて偉そうなこと
言ってきたけど、
結局一人の女も幸せにできない
ダメダメな男だ・・・
「理想かぁ~・・・」
今頃何してるんやろなぁ~
祥子はアイツとうまくいったのかな?
果穂ちゃんは幸せに
してもらってるのかな?
高橋は新しい男見つけたかな?
そんなことを考え一人
ベランダで空を見ていた。
結婚って何なんだろうな・・・
ふと下に目をやると、
おじいさんとおばあさんが
手を取り合って支え合ってた。
俺は自然と顔が緩んだ。
あれが幸せなのかもな・・・
俺はそう思った。
ピンポーン♪
家のインターホンが鳴った。
ん!?
誰だろう?
「はい!!」
「こんにちはぁ。」
女の人・・・!?
この声は・・・
俺はそっと玄関のドアを開けた。
「せんぱーい!!」
ドアを開けると勢いよく
高橋が抱きついてきた。
「たっ、高橋!?」
「はい!! お久しぶりです!!」
「おっ、おう・・・」
なんだ!?
でもこの状況も悪くないなぁ・・・
久しぶりに女性に抱きつかれた!!
俺は少しにニヤけた。
「明日からまた、先輩と
同じ部署に戻ります!!」
「えっ!? そうなのか?」
「はい。」
高橋が戻ってくる・・・
「また、よろしくお願いします。」
「おう。おかえり。」
俺がそう言うと高橋は少し涙目で、
「寂しかったぁー!!」
と、俺の体にまわした手が
より強くなった。
俺はよしよしと頭をなでた。
「先輩。 今日はお祝いで
私が料理作ります!!」
「マジで!?」
「はい!!」
「料理できんのか?」
「は、はい・・・(焦)」
自信ないんだな・・・(汗)
「まぁ、上がれ。」
と、すんなり上げてしまう俺・・・
意志弱っ!!
「お邪魔しまーす!!」
高橋は台所に向かい、
持ってきたエプロンをかけた。
「待っててくださいね!!」
「おう。」
料理の準備をする高橋の後姿に
少し見惚れてしまった。
いいよなぁ~女の子が
俺のために料理を作る。
祥子はあまり作らなかったからなぁ~
すごいうれしい。