「大丈夫ですか??
ごめんなさい!! 私のせいで・・・」
「果穂ちゃんのせいじゃない、
大丈夫だから・・・」
そして男が寄ってきて
果穂ちゃんの腕をつかんだ。
「おい、二度とおかしな真似すんなよ。
今度したら殺すぞ!!」
そう言って、嫌がる果穂ちゃんを
無理やり引っ張った。
「やめて!!」
「いいから、早よ来い!!」
「待て、コラッ!!」
俺は倒れながらも、
顔を上げて呼び止めた。
「果穂ちゃんを幸せにしてやってくれ!!
いつも安心を与えてやってくれ!!
頼む・・・」
「はぁぁぁ?」
「もし、泣かした・・・
おまえを絶対許さん!!」
「アホか。」
男はその言って強引に
果穂ちゃんを連れて行く。
「有方さん!!」
果穂ちゃんは男に引っ張られながら
悲しそうに俺を見ている。
大丈夫だ、果穂ちゃん・・・
ありがとう・・・
幸せになるんだよ!!
俺はそう心で言いながら、
果穂ちゃんを見送った。
俺はそのまま仰向けになり
夜空を見ていた。
「また俺はピエロかよ・・・」
そう思うとおかしくて笑えた。
本当は悲しいのに、本当は泣きたいのに、
俺は夜空を見ながら笑っていた。
俺はしばらく病欠を取った。
こんな顔で会社には行けない。
高橋からもメールが入っていたが、
返信はしなかった。
果穂ちゃんもバイト先を辞めたらしい。
携帯もつながらないし、家もしらない。
これで果穂ちゃんとは
完全に切れてしまった。
果穂ちゃんのことは本気だった。
祥子とのことで少し迷ったけど、
いなくなってその想いの
大きさに気付かされた。
けど、俺はまたピエロ・・・
そんなことばかり考えていると、
ピンポーン♪
インターホンが鳴った。
「はい。」
「高橋です。」
げっ!! 高橋・・・
よりによって一番
ややこしい奴が来た。
そっとドアを開けると、
「先輩、大丈夫ですか?」
いつもの明るくやさしい笑顔だった。
「どーしたんだ?」
「これ、お見舞いです!!」
そう言って、手の持っていた
バナナを俺に差し出した。
なんでバナナ???
「ありがとう!!」
高橋はニコッと笑いながら
俺の部屋に入ってきた。
「お邪魔しまーす!!」
「おい、何勝手に・・・
たっく・・・」
俺はドアを閉めた。
「先輩の部屋綺麗ですね。」
「そうか? 今帰りか?」
「はい。」
「そうか。 お疲れさん。」
そう言って俺は、高橋の髪を
グシャグシャにした。
「もう~先輩!!
せっかくセットしてきたのに・・・」
「セット? 俺の家来るのに?」
「そりゃそうですよ。
好きな人の家に行くんだから。」
「はいはい。」
俺はその言葉を聞き流し、
コーヒーの用意をした。
「先輩?」
「なんだ?」
「私、ここに住んでいいですか?」
「はぁぁぁ?」
「一人じゃ広いでしょ?」
「いや、ちょうどいい。」
俺はあっさり返す。
高橋が俺のそばに寄ってきた。
「なんだ?」
「先輩・・・」
高橋が俺に抱きついた。
「高橋・・・?」
「少しだけこのままで・・・」
俺は振り払わずに、
やさしく背中を叩いた。
上目使いで俺を見てくる。
やめろ・・・
そんな目でみたら・・・
そう思った瞬間、高橋が俺にキスをした。
ん・・・!?
振り払おうとしたが、
両腕を首に絡ませてきた。
「んんっ・・・やめっ・・・」
思ったより力が強い。
「やめろ!! 高橋!!」
なんとかその腕を解いた。
「・・・すいません。」
そう言って高橋は俯いた。