気づけばナミの腕の中。


「ごめんな、クオ……。」


独りにしてごめん。


傍にいてやれなくてごめん。


守ってやれなくてごめん。


いつも理不尽で絶対に謝らなかった強情なナミが、俺にごめんを何度も言う。


違う、違うよナミ……。


俺が欲しいのは、そんな言葉じゃない。


「死なないで…ッ……ずっと一緒に…っ、」


「………っ。」


「嫌だ……っ、ナミ!ナミ…ッ!」


俺はナミの腕の中で、子供みたいに大声で泣きじゃくった。


こんなにナミは温かいのに、いつか冷たくなってしまうのかと考えると怖くなった。


家族も友達も何もない俺は、また独りぼっちになってしまうと思うと怖かった。


この三年で当たり前になった他愛もない、だけど幸せな日常が壊れてしまうのが怖かった。


何よりも………ナミを失うのが怖かった。





あれから一ヶ月。


ナミがいなくなるまで、半分が過ぎだ。


この一ヶ月はホント早くて。


でも、これからの一ヶ月の方がもっと早く感じるんだと思う。


あの日以来、ナミはいつも通り。


延命治療の事も病気の事も何も言わない。


だから、俺も何も言わずいつも通り。


だけど、日に日に痩せて白くなっていくナミをみたら、なんてゆーか……心がザワザワするってゆーか、痛い。