捕まって殴られるのがオチだ。


それこそ病院へ行くのに遅くなってしまう。


「じゃあさ……」


歪んだ笑みを浮かべた睦野の顔が近づいてきて思わず目を閉じた。


「今、クオからキスしてよ。」


ねっとりとした声に体を舐められてる様な感覚がしてキモチワルイ。


予想もしていなかった言葉に俺は目を開いて睦野を見る。


「そしたら離してあげる。」


にやにやと笑う不良達をみて目眩すらしてくる。


こんな人が見ている所で?


俺から睦野にキスをする?


………あり得ねぇ。


考えただけで気分悪い。


「やだ」


「じゃあ、返さない」


即答する睦野。


もう、殴られても良いからコイツら退けて病院に行こう。


早くナミのところに行かないと。


「なーにしてんの?」


決して大きな声じゃないのに、賑やかな廊下でやけにその声がはっきりと聞こえた。


それは睦野達も同じみたいで不良達みんな声の方を見ている。


「竜……。」


「急いでたんじゃねぇの?」


いつもと変わらないところが何か怖い。

「えっと………。」


そんな竜に戸惑う。


「おい、睦野。手ぇ離せ。」


いきなりドスの効いた低い声に、睦野達より俺の方がビビってるかも……。