「――――……ッッ!」


全身の血がサァーと引いていくのが分かる。


俺は思わず席を立って教室を出て行こうとしたが、あとは挨拶だけだからって担任に引き止められた。


「起立、礼。」


学級委員の言葉と共に教室を飛び出した。


廊下は走るなってすれ違う教師に言われるけど、そんなの知ったこっちゃない。


――――ドンッ


廊下の角を曲がったところで誰かにぶつかった。


俺はごめんと言って再び走ろうとしたけど、ぶつかった相手にがっちり腕を掴まれて行けない。


「ぶつかってきといてそんだけ?」


「………!!」


最悪だ。


この急いでる時に、睦野にぶつかるなんて。


「……ごめん。でも俺、今急いでるんだ。」


今は早くナミのところに行かないと!


「知らねえな。」


「っ、ほんと頼むから…!」


「やだねー。」


このままじゃきりがなさそうなので振り払おうとするが、ぜんぜん離してくれない。


「むつ……ッ」


強く壁に押さえつけられて、一瞬息が詰まった。


ホームルーム後の廊下はたくさんの生徒達で賑わっているが、みんなこちらを見ても直ぐに目を背けた。


腕は離してくれたものの、前には睦野達、後ろには壁。


完璧に逃げられない。


「……………。」


一刻でも早くナミのところへ行きたいけど、睦野を押しのけて逃げるなんて、………出来りゃ苦労しない。