「黒髪でロン毛の人と赤毛でピアスしてる人。二十歳くらいかな?とりあえず二人ともめちゃくちゃカッコ良かったよ。」
黒髪ロン毛と赤毛ピアス…?
俺にそんな知り合いいねぇよ。
黙っている俺にクラスの女子が困った顔で知らない人?って聞いてきたから、大丈夫、ありがとう。とだけ言った。
スニーカーを履いてさて、行くかって思った瞬間……。
「知らないやつなんだろ?」
止めとけって竜に腕を掴まれた。
「大丈夫。全く知らないってわけじゃなさそうだし……」
この台詞は嘘じゃない。
俺の名前を知ってるってことは…………。
「でも………」
ピンポーンパンポーン
竜の言葉を遮るように校内放送が流れた。
「二年三組楠木竜。校内にいたら至急職員室まで来なさい。繰り返します―――………。」
下駄箱にまで響く放送に竜が舌打ちする。
「呼ばれてんぞ。」
俺は掴んでいた手を離させる。
「シカトする。」
無表情で淡々と答える竜に半ば呆れながら、なにしたんだよ。って尋ねた。
「さぁ?心あたり有りすぎて分かんねぇ。」
そう言って竜は不敵に笑った。
「じゃあ全部まとめて怒られてこい。」
俺は竜の背中を押す。