ふわり、と桜の花びらがふと私の目の前に落ちてきた。
上を向けば満開の桜の木があって、あの日を思い出していた。

思い返せば、5年前も満開の桜の木の下だった。
大好きだった彼が、いなくなった日。
手を伸ばせば届いたのに。
この手を伸ばす事はできなかった。

―――…結蘭には、わからないよ。俺のことなんかわかってないだろ?

彼が私に残した言葉。
最後に、私に向けてはなった言葉。

ねぇ、隼人…。
あれから5年たったよ。
今日、私は、中学2年生になりました―――…。









「うーらんっ!やほ」

「っ、菜都…おはよ」

「おっはよー♪」

彼女は、柊 菜都
私のただ一人の友達であり、親友。
隼人のことで塞ぎこんでいた私を助けてくれた人。

ねぇ、なんで。
どうしてあの日、屋上から飛び降りたの…?

「ほーら、何暗い顔してるのー?」

「別に。元からだよ、菜都」

「嘘だぁ!結蘭は笑えば可愛いんだよぅ?」

「いーの。私は誰にも可愛いなんて思ってほしくないんだから。」

「うー、結蘭のばかぁ」

「うっさい。私には隼人だけでいいの。それから、菜都が幸せになってくれればそれだけでいいよ。」

「う、うら~んっ!大好きぃーっ!」

「はいはい」

これが私の日常。
何事もなく静かにすごせればそれでよかった。
もう、あんな思いはしたくなくて。
本当に逃げてたのは私だったのかもしれない。