「手、冷たくなってる。」



茅流さんはニッコリ笑いながら、私の手ごと自分のコートのポケットにしまった。



茅流さんのポケットの中で、茅流さんのおっきな手に包まれて冷えた手が暖まって行く。



ポケットの中で、だんだん指がしっかり絡まる。



すっぽり包まれてる。



「こうしたら温かいよ。」



今日一番に真っ赤になった私の顔を覗き込んで茅流さんは満足そうに微笑んでる。



「………。」


「イヤ?」



無言のままの私に茅流さんは問掛けた。


私は首を左右に振って答える。
突然思った事が現実になってびっくりしたのと、緊張で上手く声がでて来なくて。



「良かった。」



茅流さんは一言ホッとした様に言って、またゆっくり歩いて行く。

私の歩幅に合せてさっきよりゆっくり。