俺は真瑠を抱き締めてた手を、緩めた。


真瑠は手を拭き、俺の方に向き直った。



「えっと、あの…
…ごめんなさい…。
茅流さんはホントに素敵な人だと思うわ。
だけどやっぱり、まだよく知らないし…
お付き合いするのは…。」




真瑠は伏せ目がちに、そう言って、今度は俺の目を見て言う。



「色々お世話になって良くして頂いたのに…すみません…。
私今日は帰ります…。」



そう言って荷物とコートを取りに行こうとした。



「……じゃあ俺の事、ちゃんと見てくれよ!?」



俺は思わず真瑠の腕を掴んで、引き止めた。


またびっくりして、俺が掴んだ手を見てる。



「ごめんな。
急に…。
でもちゃんと俺を見て欲しいんだ。
青野さんの事が好きだから。
一緒にいたい。
返事もすぐじゃなくていい。
だからちゃんと考えてくれないか…?」



掴んでいた真瑠の細い腕を離すと、力なくタランと下がる。



「…分かったわ。
でも、今日は帰ります。

…おじゃましました。」



そう言って真瑠はウチを出て行った。