理乃は俺の腕の中で眠りたがる。


いつも俺は罪の意識を押し殺しながら、その手で理乃の頭を撫でてやる。


他愛もない言葉を並べると、「寂しいね。」といつも、どちらからともなく漏らしてしまう。


言葉にした分だけ、闇は広がっていく気がした。



「りぃには俺がおるよ。」


理乃には拭えない孤独があった。


親に捨てられたこと、そして俺にも捨てられるんじゃないかという恐怖。


時には涙を流しながら眠ることもある。


俺がいるから、俺がいるから、と毎晩のように、子守歌代わりに紡ぐ言葉。


幸せが壊れることは知っている。


自殺したオカン、死んでしまった花穂ちゃん、そして遠い存在になった清人。


俺にもまた、理乃しかいなかったのかもしれない。


それでも、“力を合わせる”なんてのとはちょっと違って、理乃を支えて、守ってやらなきゃ、って。


そういう使命感にも似たものを感じていた。


俺らは家族を知らない。


厳密に言えば俺には昔、そういうのも居たけど、でも覚えてないねん。


接し方がわからなくて、それでも壊してしまわないようにと必死だった。