部屋には雨音なんて優しいもんやなくて、ごーってうるさいくらい、窓ガラスを打ち鳴らしてた。


けど、俺の五感は全てストップしてて、目の前の光景にただ呆然としとったんや。


次第に恐怖心に支配され、俺は足を引いた。


オカンの半開きの目が、こっちを捕らえてる気がしてな?


今でもあの光景だけは、思い出したくなくて、でも不意に思い出すねん。


降りしきる雨に遮断された、古めかしい部屋に取り残されたような感覚。




何でなん?



何で?
何で?
何で?



俺が山下殴ったから?

テストの点数悪かったから?

野球やりたいって言うたから?




後から聞いた話、オカンは光熱費も税金も滞納しとってん。


おまけに家賃もやで?


生真面目が売りみたいなオカンはきっと、そういう自分自身も許せんかったんやろうねぇ。


今考えたら生活保護だって貰えば良かったんやろうけど、やっぱオカンは受け取らんかったと思う。


とにかく、そういう性格やってん。