最悪にじめじめして、今にも雨が降り出しそうな日やった。


カビ臭い裏通りに、拳を振り下ろす鈍い音が響き続け、俺の顔は引き攣ってく。



「おい、清人!
もうやめぇや!!」


おっさん、うめき声出しててな。


見るからに意識も朦朧としてて、さすがにヤバいやろう、って清人を止めた。


でもアイツ、その日に限って俺の声も耳に入ってないみたいな顔で、そいつ殴り続けててん。



「さっき逃げたツレのヤツが仲間呼んだらどないすんねん!
ポリ来るかもやし、そろそろ逃げるで!」


そう言った瞬間やった。


ゴッ、って後ろから角材みたいなんで殴られて、俺は意志とは別に力が抜けてん。



「陸!」








そこからは、どうなったんかはわからない。


後から聞いた話でまとめると、かなりの人数に囲まれてたみたいや。


俺ら最初、チンピラ風の男らに絡まれて、でも返り打ちにしてやった。


清人はその中のひとり捕まえてボコボコにしてたけど、ふたりくらい逃げたヤツがおってな?


俺らが喧嘩してた相手、ヤクザの構成員やってん。


角材で後ろから、ってことで、俺なんか一瞬で気失って、清人も一発喰らって記憶なくなったって。


気付いたら俺ら、組事務所やったわ。