あの時俺がちゃんと止めてればな、って。


後を追ってやることも出来たやろうし、そしたらこんなことにならなかったかもしれないんやから。


けど清人は、多分、俺以上に自分を責めてたやろう。






「あなたと友達になってから、花穂は変わったわ!」


「お前の家からの帰り道だろう!
花穂はお前が殺したんだ!」


娘を返せ、お前の所為だ。


清人は花穂ちゃんの両親から散々罵倒されてたけど、反論なんてしなかった。


代わりにずっと、ずーっと頭下げて、すいませんでした、すいませんでした、って。


確かに清人の所為やない、とは言い切れへん。


花穂ちゃんの親だって、どうにもならない苦しさや悔しさ、そして悲しみを誰かの所為にしたかったんやとも思う。


けど、またこれで、清人が背負うものが増えたんや。


俺らは葬式には出させてもらえんかった。


けど、清人はずっと、雨の中で花穂ちゃんの親に頭下げ続けたんや。


もしかしたら泣いてたんかもしれんけど、そんなん全部、あの雨に消えた。



「…花穂…」


呟いた声さえ、掻き消される。


清人にとって、花穂ちゃんはホンマに大切やってん。


女としては見れんかったし、妹に近かったかもしれんけど、やっぱ俺らの積み重ねてきた大切な時間もあってん。


俺よりずっと、清人は花穂ちゃんと一緒におったんやから。




悲しい別れやった。

俺の人生で一番悲しかった。



花穂ちゃんは今、どう思ってる?