マサは問題児だった。


俺らと入れ違いで中学入学したわけやけど、元々清人の弟ってだけでも恐れられてたのに、中身は兄より手に負えない。


本当に窓ガラス割ったり、教師殴ったり。


見かねた清人がマサをうちに連れてくることもよくあった。


俺が飯作ってやって、悔しそうに泣くマサのことを清人が慰めて。



「マサは何も悪くねぇんだよ。
ただな、誰かを恨んだってどうしようもねぇだろ?」


それが清人なりの処世術だったのかもしれない。


聞いてて俺は、いたたまれなくなったことを覚えている。


結局俺らは子供で、身勝手な大人に今も振り回されてる、ってこと。


酒飲んでても、煙草吸ってても、背が伸びても、仕事してても、俺らはやっぱり“大人”じゃない。


清人はこんなことがある度に、好きでもない女を抱く。


マサは喧嘩ばっかりやし、清人は女と揉めるばっかりやし、その度に心配してる俺は、こいつらのオカンみたいやった。


誰かの愚痴を聞いてやるのは、慣れているつもりや。


でも俺も、知らず知らずのうちに、そんなの全部を抱え込んでたんやろう。


どうにも出来ないことの中でもがいてたのを覚えてる。