そんな時、珍しく朝、清人とリビングで遭遇した。


俺らは一緒に暮らしてるけど、家出るんは俺のが早いし、清人はショップの閉店遅いしで、生活は結構バラバラ。


それやしリビングに男ふたり揃って何するってわけでもないから、各々自分の部屋で過ごすし、同じ家でもあんま顔合わせることって少ないんやけど。



「珍しいやん。」


「あぁ、ちょっと朝一で寄るとこあるから。」


ふうん、と俺は、煙草の煙を吹かす清人から視線を外した。


キッチンには、昨日花穂ちゃんが洗ってくれた食器が水切りかごに並べられている。



「なぁ、それよりお前、花穂ちゃんのことどう思うてるん?」


「…何、いきなり。」


「あの子も高校入って女らしくなったと思わん?」


そして俺は、ちょっといじめる気持ちでカマかけたんや。



「俺が狙うって言うたらお前、どうするん?」


清人は目を丸くして驚いた顔をした。


でも次の瞬間には視線を落とし、「良いんじゃない?」と言う。



「お前らなら似合ってるよ。」


頑張れよ、と清人は言った。


そしてとてもとても悲しそうな顔して、さっさと家を出たんや。


パタンと扉が閉まり、俺はひとり、肩を落とす。



「アホか、アイツ。」


俺になら譲っても良いって思ってるんやろうか?


それとも本気で無関心なんかは知らんけど、何でそんな寂しそうやねん、って。


あの時の清人は、捨てられた子供みたいな目をしてた。


仲間外れにされるとでも思ったんかなぁ?