「レナちゃん、キャバ復活したんやって?」


「うん、まぁね。」


「俺今度、誰か誘って遊びに行くわ。」


「良いよ、そんなの。
あたし別に、周りの人にまで営業しようとか思わないし。」


そっか、と俺は言う。


本当にプライド持ってやってる感じで、これなら清人も捨てられへんやろうなぁ、って。



「そういや、レナちゃんの本名は?」


「あたし、霧島愛里。」


黒霧島ー、と横から清人が口を挟む。


久しぶりの再会らしいふたりやけど、ふざけ合ってて仲良しそうやった。



「そういや、理乃まだ来ないの?」


「アイツ学校から一旦着替えに帰るんやろうし。
まぁ、そのうち来るやろ。」


なんて言いながら、ちょっと心配してる自分が居る。


清人は見透かしたように笑ってて、不貞腐れるように俺は、机の下から蹴りを入れた。



「あー、陸が蹴ったー。」


「子供か、お前。
オレンジジュース頼めや、アホ。」


ホンマ、しょうがない子や。


レナちゃんも可笑しそうに笑ってて、彼女の分のビールが来て、また乾杯し直した。


小うるさい居酒屋と、そしてこんな何でもない会話。


目の前のふたりは笑いながら何かを耳打ちし合ってて、幸せなんやろうなぁ、と思う。


これならもう、俺が居なくなっても大丈夫なのかもしれない。