「ポーンと紙切れ書いて、ポーンと出せばえぇやん。
何や人生背負うとか考えたら頭痛くなるやん?」


何だそれ、と彼は笑う。


だから俺も笑った。



「そういや奈緒子さん、この前また離婚したんだって。
おばさんのくせにある意味エネルギッシュだよね。」


「つーか、いつの間に再婚しとったん?」


「マサが言うには、一年半くらい前だって。
その前も一回戸籍で遊んでるみたいだけど、俺よく知らないし。」


戸籍で遊んでる、って言い方もどうかと思うけど。


まぁ、あの人らしいと言えばそうなのかもしれない。



「アユ、心配にならへんの?」


「それがアイツ、彼氏一筋らしくてさ。
ちょっと前までキヨ兄、キヨ兄って言ってたのに。」


「…寂しいんやぁ?」


そんな感じ、と清人は腹を抱えた。


生きていくってことは、良くも悪くも変化を続けるということ。


そしてそれは、悲しみばかりではないんやろう。



「あ、レナだ。」


清人の携帯が鳴り、彼が個室の場所を伝えると、遅れてレナちゃんがやってきた。


久しぶりー、なんて言いながら、彼女は速攻でビールを注文。


そして清人の隣に腰を降ろした。



「お前、遅いから。」


「葵と会っててさ、帰りに聖夜クンが日本酒の大瓶くれたんだよ。
黒霧島ってさ、あたしに対しての嫌味かなぁ?」


「あぁ、それ多分嫌味だね。」


そんな言葉を交わしながら笑うふたりを、俺は微笑ましくも見つめていた。


場の空気は一気に華やいだ。