「何かさ、マサとか結婚しろとかうるせぇんだけど。
そんな焦んなくて良いじゃん、ゆっくり行こうよ、とか思うわけだよ。」


レモンサワー程度で酔っ払っているのか、今日の清人は妙に饒舌だった。


アホな子やなぁ、と思いながら俺は、ビールを流す。



「俺、りぃが卒業したら結婚するから。」


「…マジ?」


「大マジや。
まぁ、すぐにすぐってわけでもないけど、俺ら家族欲しいし。」


言ってやると、清人は少し戸惑うような顔になる。


思ってもみなかった、って感じやろうけど。



「俺さ、子供好きやし?
大家族でわいわいしたいなぁ、って。」


「…理乃は?」


「理乃もわーい、って喜んでた。
ほら、アイツ単純やし、若いママになれるー、ってさ。」


なんてのは、ちょっと嘘。


理乃にそれを伝えた時、彼女は嬉しい、と言いながら泣いていた。


そして、りっくん大好きだよ、と言われ、俺まで泣けたんや。


これは、俺と理乃だけの秘密やから、誰にも、つか清人にも内緒やけどね。



「…結婚とか、俺よくわかんねぇ。」


呟き、彼は後ろの壁に背中を預ける。


まぁ、あんな家庭環境やったし、仕方がないといえば悲しい言い方なのかもしれないけど。



「俺、りぃ取られたくないもん。」


「…そんな理由?」


「8割はな。」


言ってやると、清人は苦笑いを浮かべていた。


俺だってそういうのよくわからへんけど、一生一緒に居りたい、って気持ちだけで十分やと思うねん。


清人は何でも難しく考えすぎるから。