妙に物分かりの良い台詞やった。


俺はやっぱり呆れ返る。



「レナはちゃんと考えて決める女だし。
考えた結果そうするなら、俺が口出すことでもないし?」


清人は多分、今までのことを想っているのだろう。


彼女は責めることもなく、ありのままの自分と一緒に居てくれたから、って。


でも彼は、寂しそうな顔なんかしてなかったから、もう良いや、俺はと思う。



「アイツさ、今まで例えば何かで一等賞取ったりだとか、人に誇れることってなかったんだって。
でも、キャバでナンバーワン取ったら、胸張って親に会いに行ってやろうかな、って言ってた。」


何か格好良いっしょ?


そう言いながら、清人は笑う。



「なら、キヨも店行ってるん?」


「全然。
俺忙しいし金ないし、多分アイツも来て欲しいとかは思ってないと思うよ。」


ふうん、と俺は言う。



「でも、あの鎖って千切れたままやろ?」


「今、これ一緒だから。」


そう言って清人が取り出したのは、キーケース。


ブルガリのそれには、車の鍵の他に、ふたつの銀色に光るもの。



「…何?」


「レナんちの鍵ー。」


もしかして、それがお揃いとでも言いたいんやろうか。



「俺はレナんちの鍵持ってるし、レナも俺んちの鍵持ってるわけじゃん?
別にさ、それだけで良いってゆーか?」


特別、ってことなんやろう。


すっとぼけみたいな顔してるけど、多分幸せなんやろうと思う。