「何で怒ってんの?」


「そら怒るやろ。
いきなりレイコさんち来て、セックスしてー、って。」


「別に昔ヤッたんだから一緒だろ?
それか金払えば良い、って?」


言った瞬間、清人の肩口を掴み上げた。


睨むが彼は、目を逸らすように殴れよ、と一言だけ。


ホンマにどうかしてるで、コイツ、と俺は舌打ちだけを混じらせた。



「喧嘩するなら出ていきなさい。」


冷たくレイコさんは、それだけ言った。


突き飛ばすように清人を掴んでいた手を離すと、彼はまた、窓の外へと視線を投げてしまう。



「頭を冷やしてきなさいよ、ジルくん。
それで冷静になってもあたしとセックスがしたいなら、また来なさい。」


清人は自嘲気味に笑い、顔を覆った。


泣いてるみたいな姿を前に、彼女はあからさまにため息を吐き出し、肩をすくめる。



「ちょっ、レイコさんどこ行くん?!」


きびすを返した彼女に、俺は弾かれたように声を上げた。


が、うるさいわねぇ、と睨まれる。



「嶋さんと密会?」


聞いたのは清人やった。


また驚いて今度はそっちに顔を向けると、レイコさんはあからさまに怒った顔になり、眉を寄せた。


今の清人はマジでどうかしてるし、レイコさんや俺を怒らせてどうするつもりやねん、って。



「アンタは嶋さんと寝てるもんな?」