「美味しいコーヒーショップがあるって聞いたから来てみたんだけどね。」


清人やった。


驚いてる俺と、あからさまに迷惑そうな顔のレイコさんを尻目に、ちょっと酔っ払ってるご様子や。



「入れてー?」


「ダメダメ、帰りなさいよ。
ここは喫茶店じゃなくてあたしの家なんだから。」


酔っ払いは立ち入り禁止ー、と言う彼女に、だけども清人は動じることはない。


結局少しの押し問答の後、まったくもう、と言ったレイコさんは諦めたように彼を室内に入れる。



「アンタ達ねぇ、あたしとこの家を何だと思ってんの?
ジルくんもコーヒー一杯飲んだらそこの馬鹿と一緒に帰ってちょうだいね?」


ぶつくさ言いながらも、何だかんだでレイコさんは清人にもコーヒーを淹れた。


俺は思わず笑ってしまったが、酔っ払いクンはただ窓の外を黙って見つめている。



「何で俺だけの隠れた名店を知ってるん?」


おどけたようにその背中に問うてみたけど、彼は何も答えることはなかった。


代わりに俺ではなく彼女に向け、わざとらしく笑ってみせる。



「セックスしてくんない?」


「…は?」


こらこらこら、とさすがに俺は声を上げた。


レイコさんも何事なのかと驚いた顔だが、清人は本当に酔っ払っているらしく、へらへらと笑っている。



「お前、マジでどしたん?」