「人は何でそんなに、自分が生まれた日を重要視したがるの?」


カップに口をつけ、レイコさんは問うてきた。



「きっと、自分の存在価値を見い出したいんやよ。」


「じゃあ何で、贈り物なんか?」


「それが目に見えたものやからやないんかなぁ?
思ってることって誰にもわからへんけど、物あげたらわかりやすいやん。」


ふうん、と彼女は言った。


レイコさんはたまに、何も知らない子供みたいに、物事の理由を知りたがる。


それでもどこか、遠い世界の話でもしてるみたいやねん。



「銀二も何か貰ったら嬉しいの?」


「まぁ、そりゃ普通にねぇ。
けど、それが嶋さんとかやったら腹の底考えてしまうから逆に怖いけど。」


言うと、レイコさんはそうね、と小さく笑った。


珍しくご機嫌なご様子や。


刹那、ピンポーンとチャイムが鳴り、ふたり、驚いた顔を合わせた。


深夜のこんな時間に、しかもレイコさんちに俺以外に来客やなんて、と眉を寄せる。



「俺出ようか?」


「良いわよ、あたしの家なんだから。」


そう言ったレイコさんは俺を制止する格好で、玄関へと向かう。


ドアについた覗き穴で向こうを確認した瞬間、一度俺を見て、そしてそれを開けた。



「何の用かしら?」