例えば“夫婦で顔が似てきた”なんて言うことがあるけど、人間、一緒におるヤツに顔や表情が似てくるんやって。


だったら俺は、誰に似て、どんな顔してるんやろう、って。


清人はたまに、嶋さんとダブって見えるほど、恐ろしくも冷たい顔をすることがあった。


レナちゃんも清人みたく寂しそうに疲弊した顔してるし、なら、俺はどうなんやろうか、って。


理乃は、どうなんやろう、って考えるねん。





この5年で、嫌いなものばかりが増えた。


それでも、その中で一番嫌いなのは、報われない恋をしてるヤツや。


俺も含めて、悲しそうな顔を見るのが辛かった。


5年経っても相変わらず25のレイコさんは、未だに「愛って何?」と聞いてくる。


毎度毎度、俺は答えなんて持てないまま。


いくら時が流れ、どれだけの季節を繰り返そうとも、終わりのないループの中や。


それでもまだ、俺は心のどこかで光を探してるねん。


諦めと希望、相反するものに縋って、でも結局、5年のうちで変わったことなんかひとつもなかった。





清人の時間はどうなんやろう。



近いようで、
遠すぎる関係。


背中合わせやったはずなのに。




最近俺、中学の頃の夢ばかり見て、虚しくなるねん。


あの頃は楽しかったなぁ、あの頃に戻れたらなぁ、ってことばっかや。


誰の想いも報われないこんな生活は、いい加減、もう嫌にもなるで。