彩が俺の車に乗り込んできた。


俺も清人もそこから言葉は少なくなり、彩の楽しそうな声が後部座席から聞こえてくる。


嫌になるくらい甘ったる香りが充満していて、吐きそうやった。



「みっくん、どこ行くの?」


「ホテルー。」


一瞥したが、助手席の彼はやる気なくそう言うだけ。


後ろで彩は、きゃっきゃっと喜んでいた。


つーか、“みっくん”って清人のことかい、って突っ込みそうになるけど。


レナちゃんの名前が出ないことが、逆に不自然に感じてしまうほど。



「めっちゃラブラブやなぁ。」


それでも、白々しくも言ってやると、また彼女は嬉しそうに笑う。


清人は煙草を咥え、窓の外へと逃げるように視線を滑らせた。


これから彼は、好きでもない女を抱くんや。


好きな女を欺いて、金のためだと繰り返す。


俺は物悲しさに蝕まれながら、ふたりをホテルに送ってやった。


清人はやっぱり嘘みたいな笑顔で、騙されてるだけの彩は滑稽そのものやったけど。


でも、さすがにレナちゃんのことが気になった。