空気の悪さに耐え兼ね、携帯が鳴ったのを理由に俺らは店を出た。


清人は子供のような顔で視線を落とし、俺もさすがに大きなため息を吐き出した。



「レナちゃん、多分何か気付いてんで?」


「だろうな。」


「それでもこんなん続けるん?」


「じゃあ、どこに引き返す道があんの?」


確かに、清人はどのみちあの彩って女とヤッてるんやし。


今更手を引くことは出来ないし、騙すなら最後まで、ってことやろうけど。



「なぁ、キヨ。
何かわからんけど、あの女は俺にまわせ。
俺がヤるなら少なくとも、お前そんな顔せんでえぇやん!」


「それじゃ意味ねぇんだよ。」


「そんなに金が欲しいん?」


清人は生きることと同じくらい、金に興味がない男やったはずやのに。


なのに今のコイツは、別人みたいにそれのみに執着してる。



「何で俺にすら何も言わへんねん!」


「全部片付くまで待ってろ。」


頼むからもう聞かないでくれ、と。


俺は苦々しさに唇を噛み締めながら、未だ微かに漂う甘ったるい香りに嫌悪感を覚えているような顔。


俺と清人はもう共犯、ってことやろう。



「やったらせめて、レナちゃんには誤魔化し通せ。」