「…霧島シュウ、や…」


「あ?」


「清人はその男を探してたんや。」


裏切りやった。


屈辱的やったけど、俺は清人より理乃を選んでん。


苦々しさと痛みに唇を噛みしながら、こうべを垂らす。



「男?
そんなこと聞いてんじゃねぇだろ?」


原因が“女”ってことまで、嶋さんは知ってるんや。



「あの馬鹿が今関わってる女の名前、吐け。」


「ホンマにそれ以上知らん!」


「知らねぇはずねぇだろ?」


「俺はキヨに女がおるなんて初耳や!
やから顔も名前も何も知らんわ!」


声を荒げると、うるせぇなぁ、の言葉と共に、最後にボディーに一発や。


今度は膝から崩れ落ち、土下座のような格好になる。



「…頼むから、もう勘弁してくれや…」


これ以上、俺を裏切り者にさせんでくれ。


震える声色でそう吐き出すと、彼はため息を混じらせ、肩をすくめた。



「…霧島シュウ、ねぇ。」