ふたりが離れるべきなんだとは、今でもずっと思ってること。


それでもいつも、アイツが吐き出す場所がそこにしかないの、知ってるから。


幸せにしてやりたいと思いながら、苦しめることしか出来ない。


清人のそういう辛さは、痛いほどにわかった。



「お前、理乃と仲良くしろよなぁ?」


いつもいつも、俺にそう言ってくれるんや。


人の心配してる場合じゃないくせに、どんだけ気にするねん、って。


俺らは地獄の門扉の前で手招きするのが仕事やからこそ、女なんか愛して良いはずもないのにな。






少しずつ、少しずつ、時計の針が歪んで進んでいることに、まだ気付けなかった。


始まりがどこからか、なんてことは愚問やけど、それでもあの日の強制捜査が端を発してるんやろう。


数少なくとも、俺らの大事なものはひとつやないねん。


それをどれかに絞らなきゃならないことになるなんて、思わなかった。