やっと清人が帰ってきたのは、それから4日後やった。


顔に出してないつもりで仕事してるんやろうけど、何かあったんは明白や。



「花穂ちゃんに会いに行っただけなのに、今年はお前、様子が違うやん。」


そう言うと、彼は疲れ切った顔で笑う。


居酒屋の小うるさい席で向かい合い、清人はため息混じりにビールを流し込んだ。



「5年ってさ、長いのか短いのかわかんねぇな。」


清人は花穂ちゃんの両親に、もう来なくて良いよ、と言われたらしい。


これからは自分の人生を大事にしてくれ、もう十分だよ、と。


あれだけ一緒に過ごし、今でもずっと大事だと思っていたはずの花穂ちゃんのことが、今はもう、あまり上手く思い出せないのだと言いながら、視線を落としたんや。


正直それを聞き、俺は戸惑いを隠せなかった。



「死んだらもう、“過去の人”なん?
ただの“思い出”で終わってしまうん?」


「…わかんねぇんだよ、俺…」


原因は、明らかにレナちゃんやと思う。


花穂ちゃんが記憶の彼方に葬られるのも、清人がこれだけ弱々しい顔をするのも、全部あの子の所為やねん。



「俺ら、忘れたらあかんこといっぱいあるやん!
なのにお前、何なん?」


責めたいわけやないのに、でも言葉になってしまう。


清人は頼りない瞳を揺らした。



「失ったものだらけだな、俺ら。」