清人は答えないまま、代わりに俺を睨む瞳を緩めようとはしなかった。


じりじりと、俺の首が閉まっていく。



「こんなん嶋さんにバレたら、どうなるかわからんネタやろ?」


「それも関係ねぇ話だ。」


刹那、俺はその手を振りほどき、唇を噛み締めた。



「関係ないって何やねん!
あの子がお前の何を知ってるん?!
あの子の所為でお前に何かあったら、俺はレナちゃん許さへんぞ!」


捲くし立てるように声を荒げると、清人はバツが悪そうな顔で視線を下げた。


今まで俺らは、ぎりぎりで生かされてきたんや。


なのにあんな子の所為でそれが壊れるなんて許せへんし、それでも俺よりそっちかい、って。


誰か清人を救ってやってほしいと思っていた。


けど、あの子と居る時の清人は、救われてるようで、反面、苦しそうやねん。


ふたりは同じ瞳をしてて、傷を舐め合っているようにも見えるけど、それはお互いの傷に目を向ける、ってことでもあるんやから。


あの子の所為で、いつか清人が壊れてしまうかもしれん、って思った。


花穂ちゃんの時のような姿は二度と見たくはないし、レナちゃんはいつか絶対清人を苦しめることになる。


そういう予感ばかりがして、怖かってん。


あの子はあかん、あの子だけはあかん、って。



「あんな女に深入りすんなや。」