止めてくれてありがとう、って心から思った。


頬は全然痛くなくて、代わりに理乃の傷ついた顔が痛々しい。


俺は静かに体を退かし、立ち上がった。



「これでわかったやろ?」


理乃は顔を覆うが、俺はそちらを見ることは出来なかった。



「俺は誰とでもヤるし、代わりに誰も愛さん。」


嗚咽を押し殺したように、理乃は泣く。


心が痛くて、一番大切にしたかったヤツ傷つけて、俺はこんなことしか出来ん男やねん。


けど、俺の存在が理乃を苦しめてるねん。



「俺、当分帰らんから、その間に理乃も頭冷やせや。」







俺、理乃を愛してるんや、って気付いてしもうてん。


アイツは“妹”やなくて“女”やし、血も繋がってなければ別々の人間やねん。


それでも、どんなに愛してても俺は、理乃のことだけは抱かんよ。


大切にするのって、難しいんやね。




悔しさと、虚しさ。


悲しみばかりに支配される中で、俺は部屋を出た。