その日、工務店は驚きの声から始まった。

「結婚式に呼ばれた!?」

「誰の?」

なんと鴨居の元に挙式の招待状が送られてきたのだ。

それは信じられない人物からで、鴨居はまだ実感が無かった。

「大学の時にお世話になった先生なんですけど……信じられなくて。」

その招待状の送り主は佐野からだった。

招待状には手紙もそえてあった。

『久方ぶりだな。
身のお世話をさせてもらっていた、お母様の調子が良くなってきたので、前々から紹介されていた見合いの相手と結婚することになった。
佐野明美。』

それは何とも簡潔な文章で素気が無くて、鴨居には夢でも見ているかの様なフワフワした感覚だった。

「まぁ、行ってこいよ。せっかく呼ばれたんだし。なぁハマさん。」

坂口がそう言うと濱田は頷く。

「おぅ。挙式なんて滅多に参加できるもんでもねぇし。せっかくのめでてぇ席だ行ってこい。」

そんなわけで鴨居は二週間後に佐野の結婚式に出席することになったのだが。

同封された座席表を見てみると、鴨居の座る席には知らない夫婦だろうか?二人の名前が一緒に書かれていた。

「三芝梓さんと三芝要さんか。要か……珍しい名前だなぁ、ひょっとして杉宮先輩だったりして。」

呟いてはみたものの、そんなことはあり得ないとすぐに自分の中で否定した。



実際のところ三芝要は鴨居の知る杉宮本人で、佐野は杉宮が結婚したことなど鴨居はとうに知っているだろうと思っての計らいだった。