「やめてっ!」

「仁!」

 高遠先輩が、助けに入ろうとしたが、他のヤツラに拳銃を突きつけられ動けなくなってしまった。

 あたしは、一瞬の隙をついて、要と呼ばれていた若い男の肋骨部分を目掛け、思いっきり蹴りを入れた。よろけたところでそのまま、回し蹴りを入れた。

 要は、ドサッと倒れた。

 あたしは、机の上を走って、高遠先輩に銃を向けている男の背後に立つと、縛られていたロープごとその男の首にロープを引っ掛け背負投をくらわす。

 突然の出来事に痛くて動けなさそうだった。

 もう1人の拳銃を持った男は慌てたが、手刀で倒した。

 遼以外を倒し、振り向いた。

 時間にして1分かかっていない。

「おいおい。倒しちゃうなよ。俺も本気になっちゃうだろ」

「大山先輩に何すんのよ!」

 あたしは、遼の所へわざわざ歩いて行った。

「何って。殺っちゃおうかと思って、こうやって」

 というなり、遼は、パンツのベルトに挟んでおいたナイフを素早く取りだし、まださっきのダメージから回復していない大山先輩の脇腹にナイフを刺した。

「うぁっ。てっ、めぇ〜」

 大山先輩は、小さく呻き声をあげた。

 あたしは、目を見張り、一瞬動きが止まってしまった。

「仁!」

 高遠先輩が、近寄ろとした。

「ストッ~プ!近寄ったら手が震えて、もっと刺さっちゃうよ。こんなふうにさ」

 遼は、おどけながら、大山先輩に刺さっているナイフを、さらに差し込んだ。

 大山先輩は、遼を睨みながら、遼の手を掴んでいた。

 大山先輩だって弱いわけではない、ただ遼の力とは歴然だった。

「欄、助けたくないの?」

 遼が、あたしを見た。

 あたしは、大山先輩の白いシャツが、どんどん真っ赤に染まっていくのを茫然と見ていた。

「このナイフの角度変える?それとも、あと1cm奥に差し込む?そしたら、即死だよねぇ。救急車とか呼びたい?」

 大山先輩の顔色が、悪くなっているのが、わかった。

「欄っ、オレは・・・いいからっ。こいつ、捕まえろ・・・」

 大山先輩は、痛みをこらえながら言った。

 ムリだった。

 あたしが、遼を逮捕するにも時間がかかる。遼は、先ほどのヤツラみたいに、一筋縄にはいかない男だ。あたしが本気でやってもその間に大山先輩の命が危険な目にあうのは、わかりきっていた。

「・・・大山先輩を助けて、遼」

あたしは、遼に話しかけた。