この人。デキる。



あたしも、孔明師範について、結構修行してるのに、見切られてる・・・?



本気だした方がいい?



でも、なんで仕掛けてこないの?



懐に拳銃あるのは確かなのに。



殺気も感じられないのに、本気なんて出せない・・・。



孔明師範が、マフィアだっていうんだから、逃げる前に片付けた方がいいんだよね。



 あたしは、そう思い、高遠の目の前で高くジャンプをし、背後に着地すると、首目掛けて回蹴りをした。

 高遠は、カクンと床に倒れた。

「タカ!」

 孔明師範と、やり合っている男が、こちらの様子に気が付き怒鳴った。

 心の奥の方が少し痛かった。



なに・・・。



 あたしは、倒れている、高遠の顔を見た。

 切れ長の瞳に、長いマツゲ。

 少し苦しそうに歪んだ表情。

 なんだか、謝りたい気分になった。

 起きた時は、むち打ち確定だった。

「欄!お前、どういうことだ!なんでコイツに加勢してる!」

 もう1人の男が、孔明師範に、突き飛ばされて、壁に激突しながらも、あたしに向かって怒鳴った。

 そして、孔明師範にではなく、あたしに向かって歩いて来た。

「欄、その男も私の邪魔な存在です。後は任せますよ」

 孔明師範が、自分のシャツを着ながら言った。

「欄、お前、どうしたんだよ。あれからすっげぇ探したんだぞ。そしたら、遼は殺されてるし。お前は、やっと見つかったと思えば、わけわかんねぇ行動とってるし。いい加減にしろよ」



遼・・・。



そう、遼は、殺された・・・孔明師範に。



でも、きっと孔明師範が、正しい。



え?



正しい?

 

なんで・・・?



遼を殺したのに?



でも、あの孔明師範が理由もなく遼を殺すわけがない。



そうだよ、理由もなく。



あの、孔明師範だよ。



あたしのことを、奥さんだって言った・・・。



まって。



記憶の中では、あたし、孔明師範の、奥さんじゃ、ないよ、ね・・・。



いつ奥さんになったの?



中国にいた時のはずだから・・・。



武術習ってた時に、結婚、したんだよ、ね。