彼女が会計を済ませた後、俺達は近くのファーストフード店へ向かった。
平日の昼間は仕事中のサラリーマンや俺たちのような空き時間の学生でそれなりに賑わっている。それぞれ適当に注文を済ませて、店の2階、奥まった席で改めて向かい合い、
「はい、これが新谷君の本」
彼女が手渡すのは、別包装された文庫本2冊。青いビニール袋に包まれたそれと引き換えに、その価格を計算してお金を渡す。
「でも、意外だったなー……新谷君、そういうの好きなんだ」
ポテトをつまみながら俺をまじまじと見つめる沢城さんに、苦笑いを向けるしかない。
急に襲いかかる不安。今の俺は、彼女にどう思われているのだろう。
変な奴、男のくせに――内心、軽蔑されているのだろうか。
「あ、ゴメンね。別に新谷君が何を好きでも大いに結構だし、むしろ嬉しかったんだよ」
そんな俺の心中を察したのか、彼女は慌てて言葉を続ける。
そして、自身が持っている袋の中身をちらりとのぞかせ、
「私も、ね……男性向けのゲームが好きで、本当はもっと色々見て回りたいんだけど、やっぱり周囲の目が気になっちゃうっていうか……あんまり大声で好きだって言えないし、話が通じる友達もいないから、新谷君に妙な親近感が……勝手に、だけど」
「お互い、肩身が狭いな」
ワンコインで飲めるコーヒーを口に含みつつ、俺も彼女に妙な親近感を感じていた。
「でも、沢城さんは強いよ。今日だってカウンターに取り置きしてもらってたんだろ?」
「……店頭特典目当てでね。久しぶりにオフィシャル通販以外でゲーム買っちゃったのよ……ふっ、見事に釣られちゃったわ」
あさっての方向を見つめながら呟く沢城さんだったが、その視線が急に俺の方に向けられ、
「そういう新谷君だって、今日の本は店頭特典のペーパーが欲しかったんでしょう? ふっ、同類よ」
「おっしゃる通りでございます……」
にたりと口元に笑みを浮かべる沢城さんにつられて、俺も笑っていた。
こうやって、自分と趣味が近い人と話すのは……久しぶりだったから。
平日の昼間は仕事中のサラリーマンや俺たちのような空き時間の学生でそれなりに賑わっている。それぞれ適当に注文を済ませて、店の2階、奥まった席で改めて向かい合い、
「はい、これが新谷君の本」
彼女が手渡すのは、別包装された文庫本2冊。青いビニール袋に包まれたそれと引き換えに、その価格を計算してお金を渡す。
「でも、意外だったなー……新谷君、そういうの好きなんだ」
ポテトをつまみながら俺をまじまじと見つめる沢城さんに、苦笑いを向けるしかない。
急に襲いかかる不安。今の俺は、彼女にどう思われているのだろう。
変な奴、男のくせに――内心、軽蔑されているのだろうか。
「あ、ゴメンね。別に新谷君が何を好きでも大いに結構だし、むしろ嬉しかったんだよ」
そんな俺の心中を察したのか、彼女は慌てて言葉を続ける。
そして、自身が持っている袋の中身をちらりとのぞかせ、
「私も、ね……男性向けのゲームが好きで、本当はもっと色々見て回りたいんだけど、やっぱり周囲の目が気になっちゃうっていうか……あんまり大声で好きだって言えないし、話が通じる友達もいないから、新谷君に妙な親近感が……勝手に、だけど」
「お互い、肩身が狭いな」
ワンコインで飲めるコーヒーを口に含みつつ、俺も彼女に妙な親近感を感じていた。
「でも、沢城さんは強いよ。今日だってカウンターに取り置きしてもらってたんだろ?」
「……店頭特典目当てでね。久しぶりにオフィシャル通販以外でゲーム買っちゃったのよ……ふっ、見事に釣られちゃったわ」
あさっての方向を見つめながら呟く沢城さんだったが、その視線が急に俺の方に向けられ、
「そういう新谷君だって、今日の本は店頭特典のペーパーが欲しかったんでしょう? ふっ、同類よ」
「おっしゃる通りでございます……」
にたりと口元に笑みを浮かべる沢城さんにつられて、俺も笑っていた。
こうやって、自分と趣味が近い人と話すのは……久しぶりだったから。