松原君は私の笑顔が見たいと言ってくれた。


なのに…私は…


好きな人の幸せを知ってるのに…



その時、



バサッ


何かが落ちる音が入口の所で聞こえた。


私は急いで振り返った。


まさか、松原君…



でも、そこにいたのは…


「香奈…」


「そ…そういうことだったんだね…松原君には…」


「香奈…!」


「大丈夫…言わない…今まで香澄が言わなかったってことには意味があるんでしょ…」


違う…意味なんてない…

ただ…自分のために…



「香澄は、好きなんだね。松原君のことが…」


「えっ…」


「気がつかなくてゴメン…苦しめてたね。香澄を…」


そう言うと香奈は屋上を出て行った…


「香奈……」



香奈に…知られてしまった…


沙織さんのことも…


私の気持ちも…


「…好きなの?松原…」


山本君が言った。


「…うん…」


山本君が私をそっと抱きしめた。


「山本君……」


「オレだったら悲しませないよ」


「私たち出会ってまだ…」


「時間なんて関係ない」


「多分、山本君は沙織さんと私を一緒にしてる…でも…」


教室での出来事を思い出した。


「松原君は私は私って言ってくれた…すごく嬉しかった…」


「今は一緒に見てしまうかもしれない…でも、ドキドキするんだ…」


「えっ……」


「好きなのかな…蒼井さんが…」


山本君の鼓動が聞こえた。


トクントクンと、音をたてていた。


「で、でも…私は松原君のことが…」


「オレだって…桐原さんが好きだ。今でも…」


「…」


「君が松原を好きなように…でも…」


…でも…?


「ゴメン…」


そう言うと山本君は私から離れた。


「よくないよな…桐原さんも好きで蒼井さんもなんて…」


そう言うと、走って屋上をでていった。



私の心臓が音をたてていた。