カチャ…


松原君が包帯を巻く音だけが保健室に響いている。



まだ頭がガンガンして何も考えられないけど、まだ唇が熱かった…



松原君が私の足に包帯を巻く。
私はそれをじっと見ていた。


そして…


「さっきは悪かった…」


「……。別に…大丈夫だよ…私こそ、ごめんね」



包帯を巻き終わると、松原君は近くのイスに座った。


「もし…初めてだったら、ごめん…オレなんかで」


松原君は下を向いて、本当に申し訳なさそうにしていた。


「そんなに謝らなくても…あれは事故だから。気にしないでよ」



本当にゴメンと松原君は言うと窓を開けた。


夕方の生温い風が私の体を通り抜ける。


木の葉が夕日を浴びてキラキラと光っていた。



この空間に二人だけなんて、なんだか贅沢な気分だった。

頭が回らないせいか、私は変なことを口走ってしまった。



「松原君は…初めてじゃないの?」


何聞いてんだよ…自分。



松原君が少し驚いた顔をしたけど、すぐに普通の顔に戻ると、



「いや…初めてじゃない。初めてじゃ…」


…えっ……





そう言うと松原君は窓のほうを見た。



そして…話し出した。


「中1の頃…まだこの学校に来る前に、好きだった人がいたんだ…」



「松原君……」



夕日に向かっている松原君は…どんな表情をしているのか分からなかった。