女の扱いに馴れている、というか
あしらいに馴れている、というか

こなれている。


教室での各務の面影は、ない。


目の前にいるのは、本当にあの各務なのか。
別人ではないだろうか。



にっこりと
笑っているのに、
すごい威圧感。



あたしは蛇に睨まれた蛙のように、

動けずにいた。



時が止まってしまったよう。


各務の唇がゆっくりと動いた。

「見てたんだ?」

その瞬間、金縛りが解けたように、あたしの体が動く。
同時に、頭もフル回転を始める。


これは、
否定しないと
なんとか逃げないと!

本能的にそう悟ったあたしは、急いで口を開いた。

「な、何が!?」
ちょっ、声裏返ってるあたし!

「あたし、今来たとこだし、だからっあの…」
喋れば喋るほど墓穴掘ってる気がする。

案の定、各務は全然信じていない。
むしろ、何かを了解したように頷いた。