位置が変わって、今まで見えなかった人影が見える。


その、妙に手慣れた男子生徒の姿が-


キスをする一瞬前に見えたその顔は、知っている顔だった。



同じクラスの、


各務悠一









あたしは驚いて、その場に固まっているしかなかった。

まさか、山本先生が生徒と付き合っているなんて。
しかもその相手がクラスメイトだなんて-

そして、各務の人でなしな態度に……





「ね。このキスで終わりにしてくれるよね?」
可愛らしく小首を傾げて言う各務。


驚いていた先生も、はっと我に返り、


ぱんっ



乾いた音が教室に響きわたる。


そして泣きながら教室を飛び出していってしまった。



あたしは、馬鹿みたいに呆然と突っ立っていた。
あまりにも衝撃的なシーンを目撃してしまい、脳の処理能力が追いつかなかった。


それが悲劇の始まり。


気づいた時、
目の前には

見下すような
各務の顔があった。


「何見てんの?」


にっこりと。
幽霊よりも恐い各務の笑顔が、目の前に……