スーッと茜の手が伸びて来て

俺を抱き締めた。



「悲しい時は一杯泣いて下さい。側にいます!」


『…………。』


話し声…聞こえたのかな?

あれだけ大声で騒いでたら、聞こえてるに決まってるよな…。



『ごめん…。』


「いえ。大丈夫ですよ!前も言ったけど…あたしが幸せにします!やから、あたしの事…少しでも思ってくれた時に、今度は幸せにしてね。」


俺を抱き締める細い腕に、微かに力が入ったのが分かって

俺も抱き締め返してみる。


そしたら、恋とか好きとか…そう言う気持ちじゃないけど

俺の中で、嫌じゃない気持ちが芽生えた。




無理無理!じゃなくて、好きになる努力も大事なんやな。

考え方を変える事も大切なんや。



空以外は無理!から

茜を大事にしよう!って

そう思う事にする事が最善。



今まで、抑えて来たんやから

これからも大丈夫。



人間、慣れって怖いよなーー。






ーー………


それから、空と貴史は付き合い出したらしく

こっちにいる間、貴史のアパートに住むって

オカンから聞いた。


何となく、そうなる気がしてたから

別に驚いたりはしなかったけど…




胸にある突っかかりが取れない。









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