空「貴史…」
貴「どうしたぁ?」
スッ…
一歩、前に出ると
空が貴史にキスをした。
『………。』
周りに、みんながいてもお構いなしにキスをする空…。
目を丸くして、ボケーッと口を空けたままのオトンとオカンに
何故か、キャーキャー大騒ぎする妹2人。
何でそんな事をしたのか分からないけど…
ショックやのに、何でか…冷静な俺…。
前までの俺なら、空の腕を引っ張ってでも
貴史から空を引き離しただろう。
やけど…、これでいいんや!って何回も何回も自分に言い聞かせて
何も見たくないから、開けてたら涙が出そうになるから
目を瞑った…。
オ「空…。分かったわ…」
空「何が分かったん?アタシの何を知ってるん?」
また、威嚇する様に空が口を開き
そんな空を止めるかの様に、空の前に立ち
「おばさん…今日、空のこと連れてってもいいですか?」なんて貴史が言うから
背を向けた。
空からも、貴史からも、俺の気持ちからも
周りを取り巻く全てから、背を向けた。
握りしめた拳の爪が手のひらに食い込んで痛いのに
その痛みが、俺を落ち着かせてくれる。
無言のままリビングを出て、自分の部屋に戻ると
苦笑いをする茜の姿があって
その顔を見たら、何でか分からないけど
我慢してた涙が零れた…。
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