「ほらっこっちのがキレイだよ!!」
「待ってよっゆうちゃん!」
「"たっちゃん"が遅いんだよっ早くこっち!」
「待ってよー」
子供のはしゃぐ声。
柔らかい陽射しの中、楽しそうに原っぱを駆け回ってる…私と・・・誰?
「ほらっ"たっちゃん"ここが1番上だよ!!」
・・・"たっちゃん"?
「ゆうちゃん、先生と一緒に来なきゃおこられちゃうよー」
ゆうちゃんって呼ぶのは誰?
「だいじょーぶ!!先生もあとから来るって言ってたから。弱虫だなぁー、たっちゃんは!」
「そんなことないよっ!ぼくじゃなくて、ゆうちゃん怒られるといつも泣いちゃうから…」
私はぐいっとたっちゃんの頬をつねる。
「そんなことないもんっ」
「いたいよ、ゆうちゃん…」
たっちゃんから手を離してプイッとそっぽを向く私。
「もう、たっちゃんなんてきらいっ!!」
「ごめんね。先生に怒られるときはぼくも一緒だから。…ゆうちゃん、怒らないで。」
背を向ける私の手をたっちゃんはそっと優しく握ってくる。
「もう、怒ってないよ。」
にこっと笑顔をみせる私にたっちゃんはよかったと笑顔を返した。
「ゆうちゃん。コレあげる。」
「なぁに?」
そっと差し出された
たっちゃんの手に乗っているのは・・・
「かわいいっ!ひよこちゃんだっ!!」
黄色いコロコロしたひよこの人形。
私の宝物。
たっちゃんの手から勢いよくつかみ取ったひよこの背中にはピンクのハートがついていて。
「おたんじょうびおめでとう!」
たっちゃんからの言葉に
「ありがとう!!」
私は機嫌よくお礼を言っていた。
桜の咲く青空の下、
元気な声が2人の子供の声が柔らかな世界へと溶け込んでいった。