明衣は、彼の乏しい表情を見分けることが出来るようになりつつあった。
そして、何処か懐かしさすら覚えていた。
「…皆で楽しんできたら良いよ。俺は仕事があるから」
楡はそう言うと、デスクからUSBを拾い上げ、そのまま扉に向かった。
「後はよろしく」
「えっ?あっ、ちょっと……」
楡は出ていってしまい、扉の閉まる音だけが、何処か淋しく響いた。
「何か有ったんですかね?もしかして…彼女かな…?」
「……」
呑気に呟く五月女を尻目に、明衣だけが険しく眉を寄せていた。
───…アイツ……
「楡は、あたし達に何か隠してる」
「えっ?」
明衣の言葉に、本郷が反応する。
明衣は楡が零した灰を見つめながら、溜息を吐いた。
「隠し事なんて、無しでしょ……」