楡はその様子を見て長い睫毛を一瞬伏せ、口を開いた。
『……二年前の………』
『………うん』
思い出させてはいけないこと、明らかに地雷を踏んでいることは承知の上だった。
しかし、言わずにはいられなかった。
『…犯人、証拠不足なんだってな』
『………うん』
基はうどんを飲み込み、俯いた。
楡はうどんを箸で弄びながら、ボソボソと言う。
『俺、何でも請け負う部活の顧問してんだけどさ』
『……へ?』
『その犯人の再調査、してやるよ』
『………マジか』
基は目をぱちくりして、箸を取り落とした。
楡は行儀悪くうどん汁をかき回し、頷いた。
『要は、そいつがやったって確証出来れば良いんだろ』
何で、こんな事を口走ったのか、自分でもわからなかった。
『巧い事お巡りに引き渡してやるよ』
ただ、この子どもに、もうこれ以上苦しんでほしくなかった。