嗚咽を洩らしながら、まだ成長過程にある少年の華奢な背中が震えている。

楡は教師をしているにも関わらず、このような状況では一体どうすべきなのか判らずに居た。


取り敢えず、基のナイフを再び没収し、まだ湿っているウニのようにツンツン尖った彼の頭を撫でることにした。


「……だから誓ったんだ…法律で裁けないなら、俺が復讐してやろうって……」


楡は手を止めてしまった。

目を見開き、硬直している。


基は楡の様子が変わったことに気が付き、潤んで赤くなった目を擦りながら、顔を上げた。


「……どうしたの………?」


楡ははっとしたように基を見ると、首を振った。


「何でもない…」


傷の血は止まりかけていた。