少年がバスルームから出てくると、楡は依然濡れた状態のまま、ソファーに凭れ掛かっていた。

溜息混じりに、少年は声を掛けた。


「アンタもシャワー浴びろよ。体冷えきってんじゃん」

「………ん」


濡れたままのシャツやネクタイは、すっかり冷たくなり、楡の体温を確実に奪っていた。

楡は怠そうに起き上がると、少年が抱えていた濡れたパーカーとズボンを自然な動作で取り上げ、そのまま洗濯機へ放り込んだ。


「あっ、オイ!」

「纏めて洗って乾かした方が早いだろ」


慌てふためく少年を尻目に、楡はいつもの無表情で言う。

バスルームに向かおうと方向転換をして、楡は動きを止め、振り向いた。


「あのさ」

「?」


少年は眉を寄せる。


「名前、何ていうの?」

「今更ΣΣ!?」


少年は眼球を零しそうになりながら叫んだ。