雨が体を叩く。

朝から雨が降っていたというのに、なぜか自分は傘を忘れた。

冷たい雨が体に染み込んで、ただでさえ重苦しくて大嫌いなスーツが体に張り付いて、まるで自分が雑巾か何かになったようだった。

──楡は周りが好奇の目を向けていることに気付きながら、雨の中をフラフラと漂うように歩いた。


雨が

体の熱を奪っていく。

何もかもを洗い流していく。


この雨が



自分の過去も洗い流してくれたら良いのに。



楡はふと顔を上げた。

通行人がギュウギュウに並びながら横断歩道を渡ってくる、その中に。






刃物を構えた少年が、居た。







【小さな復讐者】